活動報告

2010年04月06日

第1回 勉強会 レポート
「大学の明日を考える会」の設立に伴い、第1回勉強会を開催しました

2010年3月18日(木)15時より、日本教育会館にて、大学の明日を考える会【会長:大橋光博<株式会社MRI 代表取締役/ 元:日本銀行・審議役、西京銀行・頭取>、事務局:HCアセットマネジメント株式会社】の設立に伴い、第1回勉強会を開催しました。

学校法人においては、財務面において、過去に例を見ないほどの大きな諸課題を抱え、岐路にさしかかっている環境にあり、とりわけ、大学法人は、その諸課題を解決し、明日へつなげるための大きな役割を担っていると考えられます。今こそ、今後の大学の成長戦略・実現に向けて実践的議論を行う場が必要とされています。

そこで、今回の第1回勉強会は、大学財務担当者、マスコミ関係者、学識経験者、有識者の皆様を対象に当会の設立趣旨の説明を行うと共に、学校法人における資産運用と法制度・米国大学の実情等の講演を交え、皆様と活発な意見交換を行うことを目的とし、実施いたしました。


第1回勉強会の内容は次のとおりです。
  1. 事務局の挨拶<HCアセットマネジメント(株):森本代表取締役社長>
  2. 会長の挨拶 <(株)MRI:大橋代表取締役>
  3. 講演「学校法人における資産運用と法制度」<幸橋法律事務所:池田代表弁護士>
  4. 懇談会

幸橋法律事務所・池田代表弁護士の講演では、大学の資産運用の目的、大学の資産運用と関連法令、大学の資産運用において問題が起きた場合の責任の所在、大学法人の金融商品取引法における法的地位などについて、具体的な判例や年金基金との類似点/相違点を交え、ご解説頂きました。

次いで、懇談会では、東京大学名誉教授より、米国大学の実情についてスピーチを行って頂き、「大学の財政は主に寄付、授業料、資産運用益でまかなわれている。寄付は卒業生からが主体で、日本の企業からの寄付と異にしている。教える側は、著名な教授を除けば、厳しい競争にさらされている。収入増のため、(無給となる夏休み期間の講義機会を求めた移動など)たゆまぬ努力を行っている。今後日本も米国型に近づいていくのでないか。」とコメントくださいました。加えて「日本の大学の財務部門は、財務や資産運用面で、学内の専門とする教授にアドバイスを貰うことはない。今後活用すべきではないか。」というご意見も頂きました。

事務局のHCアセットマネジメント?代表・森本紀行は、「仕組み債の問題をはじめ、リーマンショック以降顕在化した大学の財務(資産運用)の問題は、過去20?30年前から起きてきたこと(生命保険会社での資産運用の問題や、企業年金の運用の問題)と基本的には同質である。同様なことが繰り返されるのは残念なことである。」とコメントし、「今後、大学の関係者に加え、会計・税務・法務の専門家ならびに学識経験者や有識者なども交え、定期的(月1回程度)に会を開催し、発展的に拡大させていきたい。」と加えました。

会長である、(株)MRI代表取締役・大橋光博氏は「大学が抱える財務面での課題は、大学の今後の経営にとって最重要経営課題であり、大学の経営層(トップ)が、財務面の抱える課題の重要性を理解し、自ら判断を下していかねばならない。まさに、組織と権限の問題にもつながる話しである。学校経営に関わる方のみならず、いろいろな立場の方々がこの会に参加して、この輪が永続的に広がっていくことを期待している。」とコメントしました。

続いて、勉強会にご参加頂きました皆様からのご意見をご紹介させて頂きます。
  • 米国大学でのサマースクールで学生に同行した経験があるが、担当教授がそのセッションが終わると次の教える場を求めて移動する場面を目の当たりにした。東京大学名誉教授のスピーチ通りと同感した。
  • リーマンショック以降、大学の資産運用は大きな影響を受けた。年金と異なり、大学の資産運用には共通するような運用目標とかいったものがない。個々の大学ごとに、資産運用の目的(資産運用の結果としての運用果実の目的)を最初に明らかにすべきである。そこが一番重要。
  • リーマンショックまでは徐々にリスクをとりながら、収益も順調に推移してきたが、ショック後は悪化した。経営層の指示にも変化が見られ、安全資産志向が高まってきている。
  • 大学の資産運用は、専門家を多少(数人)雇ったくらいでは、目的は達成できない。しっかりとした運用体制を構築するのは困難であり、外部の専門家をいかに活用するかが大事。
  • 財務(資産運用)規程でデリバティブはできないことになっていても、仕組債ならば債券というカテゴリーで、実質運用されていることもある。運用にあたって、実態(中身)をしっかり見ないといけない。
  • 時価会計により含み損の実現を行うなど会計士の意向も強くなってきている。

この他、「今後財務部門に異動の予定であり、このような機会を活用して勉強していきたい」との声がありました。

今後、「大学の明日を考える会」は、以下の論点などからテーマを選定し、ご参加の方々と理解を深めていきたいと考えております。

  • A) (会計の専門家を交え)大学の財務(会計・経理)分析
  • B) 財務(資産運用)に関する以下の諸点
    • (ア) 運用目的(運用成果としての果実とは)の論点整理
    • (イ) 内部統制/ガバナンスのありかた
    • (ウ) 運用規程のレビュー
    • (エ) 法務面の課題と対応策
    • (オ) 仕組債の問題点
  • C) 大学財団運用の海外事例研究
  • D) 金融機関・年金基金の運用事例研究
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